『アメリカン・ビューティー』(1999年・アメリカ)
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原題:American Beauty
監督:サム・メンデス
出演:ケヴィン・スペイシー
アネット・ベニング
ソーラ・バーチ
ウェス・ベントリー
ミーナ・スヴァーリ
ピーター・ギャラガー
アリソン・ジャネイ
クリス・クーパー
スコット・バクラ
サム・ロバーズ
バリー・デル・シャーマン
上映時間:2時間2分
【あらすじ】
広告代理店に勤め、シカゴ郊外に住む42歳のレスター・バーナム。彼は一見幸せな家庭を築いているように見える。しかし、不動産業を営む妻のキャロリンは見栄っ張りで自分が成功することで頭がいっぱい。娘のジェーンは典型的なティーンエイジャーで、父親のことを嫌っている。レスター自身も中年の危機を感じていた。そんなある日、レスターは娘のチアリーディングを見に行って、彼女の親友アンジェラに恋をしてしまう。そのときから、諦めきったレスターの周りに完成していた均衡は徐々に崩れ、彼の家族をめぐる人々の本音と真実が暴かれてゆく……。
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郊外で一見何不自由なく暮らしていた一家が次第に崩壊していくさまをシニカルに描いた、スパイシーなホームドラマ。平凡な核家族が崩壊する過程で、現代アメリカ社会の抱える闇を時にコミカルに映し出す。1999年10月1日に公開され、大ヒットを記録。アメリカ国内で約1億3000万ドル、国外で約2億2600万ドルの興行収入を挙げた。同年度のアカデミー賞では作品賞を含む8部門の候補となり、そのうち作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞、撮影賞の5部門で受賞した。他にもゴールデングローブ賞作品賞(ドラマ部門)、監督賞、脚本賞、英国アカデミー賞 作品賞、主演男優賞、主演女優賞、撮影賞、トロント国際映画祭観客賞など受賞多数。
「アメリカン・ビューティー」とはバラの品種の一つである。色は深紅で、発祥の地はアメリカ合衆国。映画の中でこのバラは様々な意味を持っている。例えば「豊かな家庭の象徴」としてキャロラインが自宅の庭に赤いバラを栽培し、「官能の象徴」としてレスターの妄想の中でアンジェラと共に赤いバラの花弁が登場している。また、アメリカの中流家庭の崩壊を描いた映画に「アメリカの美」という題名をつけることで、アメリカ社会に対する強烈な皮肉を利かせている。
世間体ばかり気にする妻と、反抗期でろくに口も利いてくれない高校生の娘の間に挟まれ、毎日を死に体同然でやり過ごしているダメ親父。そんな万国共通ともいうべき退屈で平凡な中流家庭をモデルに、家族の各自が心の内に抱える孤独や倦怠、不毛な閉塞感を、ピリリと辛味を利かせながら描写。中年オヤジの滑稽と悲哀を全身から滲ませ、見事アカデミー主演男優賞に輝いた実力派K・スペイシーをはじめ、各キャストの好演も見逃せない。
ジャンル:ドラマ
個人的満足度:☆☆☆☆☆