映画 #1323『マジカル・ガール』

 

『マジカル・ガール』(2014年・スペイン)

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原題:Magical Girl

監督:カルロス・ベルムト

出演:ホセ・サクリスタン
   バルバラ・レニー
   ルイス・ベルメホ
   イスラエル・エレハルデ
   ルシーア・ポリャン
   エリサベット・ヘラベルト
   ミケル・インスーア
   テレサ・ソリア・ルアーノ
   ダビド・パレハ
   エバ・リョラッチ
   ハビエル・ボテット
   ロレーナ・イグレシアス
   マリソル・メンブリーリョ
   フリオ・アロホ
   アルベルト・チャベス
   フリアン・ヘニソン
   マリーナ・アンドルッチ
   マリーア・マルティン・クエバ

上映時間:2時間7分

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【あらすじ】

白血病で余命わずかな12歳の少女アリシアは、日本のアニメ「魔法少女ユキコ」の大ファン。彼女の願いはコスチュームを着て踊ること。娘の願いをかなえるため、失業中の父ルイスは、高額なコスチュームを手に入れることを決意する。この彼の行為が、心に闇を抱える女性バルバラと、訳ありの元教師ダミアンを巻き込んでいく。出会うはずのなかった彼らの運命は、やがて予想もしない悲劇的な結末へと加速していく……。

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日本の魔法少女アニメにあこがれる少女とその家族がたどる、思いがけない運命を描いたスペイン映画。独創的なストーリーや全編を貫くブラックユーモアが話題を集め、スペインのサン・セバスチャン国際映画祭でグランプリと観客賞を受賞するなど、高い評価を獲得した。監督は、これが長編映画デビュー作となる新鋭カルロス・ベルムト。

2014年のトロント国際映画祭サン・セバスティアン国際映画祭で上映された。サン・セバスティアン国際映画祭では作品賞(コンチャ・デ・オロ)と監督賞を受賞した。第2回フェロス賞ではドラマ部門作品賞とスリラー部門作品賞(ともに作品部門の最優秀賞)、監督賞や脚本賞を含む8部門にノミネートされ、脚本賞を含む4部門で受賞した。第29回ゴヤ賞では作品賞・監督賞・脚本賞を含む7部門にノミネートされ、バルバラ・レニーが主演女優賞を受賞した。

 

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魔法少女ユキコ」のコスチュームをきっかけに、何気なく出会い、人生が予期せぬ方向へと大きく動き出す登場人物たち。かけ違ったボタンのように狂い出した運命の歯車は、誰にも止められない。少女たちのマジカルな瞳に魅入られた男たちは、愛のために罪を犯し、無垢な心を持った女たちは、愛のために残酷な裁きを下す。愛と欲望、善意と悪意、理性と衝動、悦びと苦しみ―悲劇のパズルのピースが埋まっていくように、観る者を闇の世界へと誘ってくれる。

 

監督と脚本を務めるのは、本作が劇場デビューとなるスペインの新星カルロス・ベルムト。イラストレーター、漫画家としてキャリアをスタートさせ映画の世界へ。自主製作で完成させたデビュー作『Diamond Flash』は、スペイン国内でオンライン配給され、2週間にわたって最も多く視聴された映画となるだけでなく、批評家からも絶賛され、映画雑誌"Caiman"が選ぶ2012年のスペイン映画第1位を獲得し、一気に注目を集める存在となる。

そして、本作は2014年サン・セバスチャン国際映画祭のコンペティション部門に出品された。公式上映されるや、そのブラックユーモアに包まれた独創的なストーリー、全く先読みできない巧みな構成、スタイリッシュな映像、そして想像を絶するラストに、観客は唸り、批評家たちは舌を巻いた。映画祭を『マジカル・ガール』一色に染め、見事グランプリと監督賞をダブル受賞する快挙を成し遂げた。同映画祭において、グランプリと監督賞を同時に受賞したのは1997年のクロード・シャブロル監督の『最後の賭け』以来17年ぶりの出来事であった。また、巨匠ペドロ・アルモドバル監督は、「宝石のような映画『マジカル・ガール』。私はこの映画を猛烈に愛する」と大絶賛を贈った。

 

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大ファンだと公言する漫画「ドラゴンボール」にオマージュを捧げ再解釈したコミック「Cosmic Dragon」を出版する程、日本の漫画、アニメ、映画をこよなく愛するカルロス・ベルムト監督。本作の劇中には日本テイストのアイテムが至る所に散りばめられている。物語のきっかけとなる日本の架空のアニメ「魔法少女ユキコ」のキャラクターをはじめ、アリシアが踊る曲は長山洋子のデビュー曲「春はSA-RA SA-RA」。謎の車椅子の男の豪邸には黒いトカゲのマークがあり、江戸川乱歩の「黒蜥蜴」へのオマージュといえよう。更にはエンディング曲にはピンク・マルティーニがカバーした、美輪明宏が作詞・作曲した映画『黒蜥蜴』の主題歌「黒蜥蜴の唄」が流れるなど、監督の日本通ぶりが伺える。

 

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ジャンル:クライム

個人的満足度:☆☆☆☆☆