映画 #1051『チャイナタウン』

 

『チャイナタウン』(1974年・アメリカ)

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原題:Chinatown

監督:ロマン・ポランスキー

出演:ジャック・ニコルソン
   フェイ・ダナウェイ
   ジョン・ヒューストン
   バート・ヤング
   ペリー・ロペス
   ジョン・ヒラーマン
   ダレル・ツワーリング
   ダイアン・ラッド
   リチャード・バカリアン
   ロマン・ポランスキー

上映時間:2時間11分

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【あらすじ】

1937年、ロサンゼルス。私立探偵ジェイク・ギテスは「モーレイ夫人」と名乗る女性に依頼され、市の水道局幹部であるホリス・モーレイの身辺調査をすることになった。尾行の結果、ジェイクはホリスが若いブロンドの女性と逢っている様子を写真に撮影する。だが、ホリスのスキャンダルはすぐに新聞にすっぱ抜かれ、更にホリス自身も何者かに殺害されてしまった。しかも、最初にモーレイ夫人を名乗って調査依頼してきた女は別人と判明する。

ジェイクは独自に事件の真相に迫ろうとするが、そこで見たのはロサンゼルスの水道利権を巡る巨大な陰謀と、ホリスの妻エヴリン、そして彼女の父である影の有力者ノア・クロスを中心とした人々の、愛憎半ばする異常な過去だった……。

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1930年代のロサンゼルスを舞台に、政治的陰謀に巻き込まれた私立探偵の戦いを描いた名作ハードボイルド。『さらば冬のかもめ』のロバート・タウンが脚本を手がけ、1975年・第47回アカデミー賞脚本賞を受賞した。後に、ジェイク役を気に入ったジャック・ニコルソンが自ら監督・主演して、事件の10年後の日々を描いた続編『黄昏のチャイナタウン』も製作された。

 

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1930年代後半のカリフォルニア州ロサンゼルスを舞台に、私立探偵が偶然にも関わってしまった殺人事件を通じ、誰にも変えられない運命の綾に踊らされる姿を描いたフィルム・ノワールである。1930年代当時のカリフォルニア州ではロサンゼルス上水路に絡む水利権や供給問題により水不足が深刻化しており、後にカリフォルニア水戦争と呼ばれる社会問題が発生していた。本作では、水源開発スキャンダル「オーエンズバレーレイプ事件(The Rape of Owens Valley)」をプロットに取り入れることで、ファッションや文化の入念な時代考証と併せて、単なる懐古趣味に留まらないリアリティのあるドラマを構築している。原案・脚本を手がけたロバート・タウンにとっても代表作というべき作品であり、彼は本作によって、アカデミー脚本賞と1975年のエドガー賞(映画脚本賞)を受賞している。1991年にはアメリカ国立フィルム登録簿にも登録された。

タイトルの「チャイナタウン」は、主人公がかつて警官だった時代にパトロールした下町であり、作中でも短いシークエンスながら登場して、印象的なシーンの背景となっている。

 

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ロサンゼルス政界の黒幕ノア・クロスを演じたジョン・ヒューストンは、『マルタの鷹』などの古典的フィルム・ノワールの傑作を監督したハリウッドの巨匠として知られるが、その傍ら個性派のバイプレイヤーとして映画出演もこなしていた。彼の娘で女優であるアンジェリカ・ヒューストンは当時ジャック・ニコルソンの恋人であり、その縁もあって本作への出演が実現した。フィルム・ノワールの名監督が『チャイナタウン』というフィルム・ノワールの悪役として出演していることに、キャスティングの妙味がある。さらに劇中でヒューストンがニコルソンに向かって「娘と寝たのか?」と訊くセリフがあるが、これが意味深だということで、話題になった。

金も権力も手に入れたずる賢い老人ノア・クロスを実にふてぶてしく演じたヒューストンは、主役のニコルソンにも劣らぬ異様な存在感を漂わせた。本作は彼の俳優としての代表作となり、強欲で冷酷な男ノア・クロスはハリウッド映画史上屈指の悪役キャラクターに数えられている。

 

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ちなみに、貯水池のシーンでジェイクはナイフを持ったチンピラに脅され、鼻を切られるが、この男は監督のポランスキー自身が演じており、「ナイフを持った男」としてクレジットされている。

 

 

ジャンル:サスペンス

個人的満足度:☆☆☆★★