映画 #1191『ベルヴィル・ランデブー』

 

ベルヴィル・ランデブー』(2002年・フランス、ベルギー、カナダ)

*****

原題:Les Triplettes de Belleville

英題:The Triplets of Belleville

監督:シルヴァン・ショメ

出演:ジャン=クロード・ドンダ
   ミシェル・ロバン
   モニカ・ビエガ  ほか

上映時間:1時間20分

f:id:power-zero:20231116124703j:image

 

【あらすじ】

第二次世界大戦後のフランス。一人寂しい内気な孫のシャンピオンを元気づけようと、シャンピオンのおばあちゃんは流行りの芸能をテレビで見せたり、ピアノや犬のブルーノを与えたりするが、シャンピオンの心はどこか上の空。ある日、おばあちゃんはシャンピオンのベッドから自転車の写真や新聞記事がスクラップされたノートを見つける。そこでおばあちゃんはシャンピオンに三輪車を与えたところ、彼は嬉々としてそれを乗り回すのだった。

それから何年も月日が経ち、シャンピオンはツール・ド・フランスへの出場を目指して、おばあちゃんと共に地道なトレーニングを重ねていた。念願叶って出場したツール・ド・フランスだが、大会中にシャンピオンと2人の選手がマフィアの罠にかかり連れ去られてしまう。ブルーノの活躍でそれに気付いたおばあちゃんは、シャンピオンを追って大海原を渡り、大都市ベルヴィルにたどり着く。

おばあちゃんとブルーノは、老いさらばえたかつての人気歌手トリプレットたちの助けを得て、シャンピオンの救出に奔走する……。

f:id:power-zero:20231116130019j:image

 

*****

 

バンド・デシネ作家でアニメーターのシルヴァン・ショメによる長編初監督作品で、誘拐された孫の救出のため奔走する祖母の姿をユーモアたっぷりに描いたアニメーション映画。セリフを極力排し、ジャズをはじめとした軽快な音楽にのせてデフォルメされたキャラクターが織りなす冒険を描き、フランス映画として初めてアカデミー長編アニメーション部門にノミネートされるなど世界的に高い評価を受けた一作。アカデミー賞では長編アニメーション賞のほか、主題歌賞にもノミネートされた。日本ではスタジオジブリ高畑勲らが称賛、2004年に劇場初公開された。2021年には、製作20周年を前にしたプレアニバーサリー企画としてリバイバル公開された。

2003年のカンヌ国際映画祭で特別招待作品として上映され、ニューヨーク映画批評家協会賞をはじめ多くの映画賞を受賞し、フランス映画として初めてアカデミー賞の長編アニメーション映画部門にノミネート。2021年2月10日Newsweek(電子版)が発表した批評家が選ぶ100本のアニメーション映画15位、21世紀のアニメーション映画の傑作(IndieWire)、トップ100アニメーション映画(ロッテントマト、94%フレッシュ)、100本のアニメーション映画(タイムアウト)など世界各国の名作アニメーション・ランキングに必ず選出される21世紀を代表する傑作。ファニーでチャーミングな作品は20年以上もの間、多くの人に愛され続けている。

 

f:id:power-zero:20231116130346j:image

 

f:id:power-zero:20231116130343j:image

 

f:id:power-zero:20231116130040j:image

 

2000年代に入り、多くのアニメーション作品が手描きからCG作品に軸足を移していった。時代の流れに逆らうかのように3Dの技術を取り入れながらも、手描きにこだわった。ニューヨークやパリ、モントリオールなど現実の風景をもとに架空の都市ベルヴィルを構築し、デフォルメされたユーモラスな登場人物たちが生き生きと動く世界を描きだし、タイムレスな魅力を持つ作品をうみだした。

バンド・デシネ作家からキャリアをスタートさせたシルヴァン・ショメ監督の映像は、台詞の少なさに反比例するかのように多くを語る。見る者の常識を心地よく裏切っていく展開は、いつの間にか画面から目を離せなくする不思議な力を持つ。アンバランスな体つきや奇妙な動き、個性的な登場人物など細部にまで皮肉やユーモアが効いている。

また、監督が敬愛するジャック・タチマックス・フライシャーのアニメーション、チャールズ・チャップリンら監督の少年時代、50年代を彩るさまざまな著名人への愛に溢れたオマージュが捧げられている。随所に散りばめられた、あそび心たっぷりのたくさんの仕掛けも見逃せない。

 

f:id:power-zero:20231116130447j:image

 

f:id:power-zero:20231116130441j:image

 

f:id:power-zero:20231116130444j:image

 

アカデミー賞歌曲賞にノミネートされた主題歌、ジャンゴ・ラインハルトへのオマージュ、"伝説の三つ子"が歌うスウィンギング・ジャズ、バッハやモーツァルトまで自由自在に、しかし映画にぴたりとよりそう音楽。ダイアローグがほとんどないことを観客に忘れさせ、この映画を洒脱なものにするのに大きく貢献している。

 

f:id:power-zero:20231116130542j:image

 

f:id:power-zero:20231116130548j:image

 

f:id:power-zero:20231116130540j:image

 

 

 

f:id:power-zero:20231116130545j:image

 

ジャンル:アニメ

個人的満足度:☆☆☆☆☆