映画 #1343『9 〜9番目の奇妙な人形〜』

 

『9 〜9番目の奇妙な人形〜』(2009年・アメリカ)

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原題:9

監督:シェーン・アッカー

出演:イライジャ・ウッド
   フレッド・タタショア
   ジェニファー・コネリー
   クリスピン・グローヴァー
   ジョン・C・ライリー
   マーティン・ランドー
   クリストファー・プラマー
   アラン・オッペンハイマー
   トム・ケイン
   ヘレン・ウィルソン

上映時間:1時間19分

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【あらすじ】

古びた研究室の片隅で、奇妙な人形が目を覚ました。麻布を縫い合わせて作られた身体、腹部には大きなジッパー、背中には数字の"9"が描かれている。自分が誰なのか、ここがどこなのか、彼にはわからない。恐る恐る外を見ると、見渡す限りの廃墟が広がっていた。

茫然とする彼の前に現れたのは、背中に"2"と描かれたボロ人形だった。2は壊れていた9の発声装置をなおし、自分たちは仲間だと語りかける。自分が独りではない事を知り、ホッとする9。だが、突如現れた巨大な機械獣の襲撃に2人は逃げまどう。

2は9をかばって連れ去られてしまった。気を失っていた9を助けたのは、他のナンバーをつけた人形たちだった。リーダーの"1"、人のいい職人の"5"、風変わりな芸術家"6"、そして腕力自慢の"8"。彼らは機械獣の脅威に怯えながらも、その小さなコミュニティで慎ましく暮らしていた。

人類はなぜ滅びたのか?

9体の人形は何のために作られたのか?

戦いの中で次第に明らかになってゆく謎。未だ見ぬ黙示録が今、幕を開ける……。

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2005年のアカデミー賞にノミネートされた同名短編アニメーションを長編として映画化。監督は新鋭シェーン・アッカー、製作にティム・バートンティムール・ベクマンベトフ。声の出演には主人公9役のイライジャ・ウッドをはじめ、ジョン・C・ライリージェニファー・コネリークリストファー・プラマークリスピン・グローヴァーマーティン・ランドーなど豪華な顔ぶれが並んでいる。

 

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その独創的な映像スタイルで世界中の賞賛を集める奇才、ティム・バートンは、たった11分の短編作品に心を奪われた。2005年のアカデミー賞 短編アニメーション部門にノミネートされた、新人監督シェーン・アッカーの『9』である。そのオリジナリティ溢れる世界観やキャラクター造型の魅力に惚れ込んだティムは、すぐさま長編映画化を決意、プロデューサーとして全面的なバックアップにあたる。それから5年。アッカーは頭の中に渦巻くイマジネーションを余す所なく実現し、ティムを唸らせるほどのダークでファンタジックなディティールと、ハリウッド大作をも凌ぐアクションシークエンスを併せ持つ、かつてないファンタジー映画を誕生させた。

 

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物語の舞台は人類滅亡後の未来。古びた研究室の片隅で、麻布を縫い合わせて作られた人形が目を覚ます。荒涼とした廃墟で仲間と出会い、モンスターと化した巨大な機械獣に襲われながらも、さらわれた仲間を救うために勇気を奮いたたせる…。

奇妙かつダーク、それでいて愛らしくもあるキャラクターは、ティム・バートンのアニメ作品にも通じる独特の魅力を放つ。背景となる荒廃した未来はスチーム・パンク(産業革命の原動力となった蒸気機関が発達し、現実とは異なる方向に発達した社会を前提として描くSFジャンル)と呼ばれる世界観に基づくもの。破壊された街並みや、瓦礫の一つひとつにまで古きヨーロッパの懐かしい雰囲気が込められている。ティムが驚嘆する「感情に響くディティールと、記憶に焼きつく美しい世界観」がここにある。

 

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作中に流れる名曲「虹の彼方に/Over The Rainbow」は、『オズの魔法使』(39)の主題歌。主人公の少女ドロシーが、ライオンと、案山子、ブリキ人形と一緒に、自分たちに欠けている物を求めて旅をする物語だ。自分たちの生まれた意味を探す9たちの心情と重ね合わせた心憎い選曲である。

 

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ジャンル:アニメ

個人的満足度:☆☆☆☆☆