『PITY ある不幸な男』(2018年・ギリシャ、ポーランド)
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原題:Oiktos/Pity
監督:バビス・マクリディス
出演:ヤニス・ドラコプロス
エヴィ・サウリドウ
マキス・パパディミトリウ ほか
上映時間:1時間39分
【あらすじ】
不幸なときだけ幸せを感じる男の物語。ティーンエイジャーの一人息子と、小綺麗な家に住み、健康で、礼儀正しく、概ね身だしなみは良い、一見何不自由ない弁護士の男性。しかし、彼の妻は不慮の事故により昏睡状態に陥っている。彼の日々は妻を想ってベッドの隅で咽び泣き、取り乱すことから始まる。境遇を知り、毎朝ケーキを差し入れる隣人、割引をするクリーニング屋、気持ちに寄り添う秘書など同情心から親切になる周囲の人々。この出来事がもたらした悲しみはいつしか心の支えとなり、次第に依存してゆく。
そんなある日、奇跡的に妻が目を覚まし、悲しみに暮れる日々に変化が訪れる。"楽園"を失った男はやがて自分自身を見失い、暴走する……。
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鬼才ヨルゴス・ランティモス監督と何度もコンビを組み、『ロブスター』『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』などの話題作を世に送り出してきた脚本家のE・フィリップが、同じギリシャの新鋭B・マクリディス監督とタッグを組んで放った新たな問題作。愛する妻が事故で昏睡状態に陥って以来、日夜悲しみに浸り、周囲からは同情されるのがすっかり当たり前の日常生活を過ごしていた、ひとりの中年男性。そんな彼の身に不意に訪れる奇跡とそれがもたらす意外な帰結を、シニカルなタッチで綴る。
不幸な時だけ幸せを感じるゆがんだ男の姿を通し、人間の本質を暴き出す不条理劇だ。
ジャンル:ドラマ
個人的満足度:☆☆☆★★