『クラム』(1994年・アメリカ)
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原題:Crumb
監督:テリー・ツワイゴフ
出演:ロバート・クラム
チャールズ・クラム
マクソン・クラム
エイリーン・コミンスキー ほか
上映時間:1時間59分
【あらすじ】
僕を突き抜けて
紙の上に出たがっているんだ——
強烈なトラウマを抱え、破壊的⾵刺を描き続ける漫画家ロバート・クラムと家族の、⾚裸々なドキュメント。
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1943年に生まれた、「フリッツ・ザ・キャット」で知られるコミック作家のロバート・クラム。彼の父親は元海兵軍人の暴力的な人で、家族たちはみな、心に傷を負っていた。この作品は、クラム自身が薬物中毒の兄と母や、極度の人間嫌いの弟などを紹介しながら自らのことを語る、ドキュメンタリー映画である。
ロバート・クラムはアメリカのアンダーグラウンド・コミックを代表する漫画家、イラストレーターである。カウンターカルチャーを象徴するキャラクター「フリッツ・ザ・キャット」、「ミスター・ナチュラル」を⽣み出し、またジャニス・ジョプリンのアルバム「チープ・スリル」のジャケットを⼿掛けるなど、60年代後半のアメリカにあって⼀躍脚光を浴びる存在となった。本作は、過激で⾟辣、ときに性的なオブセッションをあらわにしたコミックを描き続けたクラムにカメラを向けたドキュメンタリーである。戦前のブルースへの偏愛、ともに精神を病んでいる兄チャールズ・弟マクソンからの影響、LSDの使⽤、⼥性に対する過度な恐怖⼼と特異な性的嗜好など、そのコミックに劣らず異例ずくめの⼈物像と彼を⽣み出した家庭環境、⾃由の国アメリカのダークサイドが映し出される。
監督は、クラムとともにストリングス・バンド「チープ・スーツ・セレネーダーズ」で活動し、のちにアメリカの⼈気コミック作家ダニエル・クロウズ原作の『ゴーストワールド』(2001)を撮ったテリー・ツワイゴフ。1995年にはサンダンス映画祭グランプリ(ドキュメンタリー部⾨)、全⽶監督協会賞等数々の映画賞を受賞。また、アメリカの映画批評サイト〈ロッテントマト〉では95%、オンラインデータベース〈IMDb〉でもスコア8.0と⾼い評価を得ている。
本作『クラム』にある正気と狂気を⾏き来する滑稽な淀みは、善と悪が瞬時に⾊分けされる世界を⽣きる私たちに、別の地平を⽰唆してくれるに違いない。
ジャンル:ドキュメンタリー
個人的満足度:☆☆☆☆☆