『めまい』(1958年・アメリカ)
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原題:Vertigo
出演:ジェームズ・スチュアート
キム・ノヴァク
バーバラ・ベル・ゲデス
トム・ヘルモア
ヘンリー・ジョーンズ
エレン・コービイ
レイモンド・ベイリー
リー・パトリック
上映時間:2時間8分
【あらすじ】
刑事ジョン・ファーガソンは、逃走する犯人を追撃中に屋根から落ちそうになる。そんな自分を助けようとした同僚が誤って転落死してしまったことにショックを受けたジョンは、高いところに立つとめまいに襲われる高所恐怖症になってしまう。そのことが原因で警察を辞めたジョンの前に、ある日、旧友のエルスターが現れる。エルスターは自分の妻マデリンの素行を調査してほしいと依頼。マデリンは曾祖母の亡霊にとり憑かれ、不審な行動を繰り返しているという。ジョンはマデリンの尾行を開始するが、そんな彼の見ている前でマデリンは入水自殺を図り……。
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アルフレッド・ヒッチコックのフィルモグラフィの中でも傑作と名高いミステリー・サスペンス。原作はフランスの作家ボワロー=ナルスジャック(ピエール・ボワロー&トーマス・ナルスジャック)のミステリー小説「死者の中から」。ジョンが見る悪夢やヒロインによる真実の告白など練り上げられた演出が冴える。
高所恐怖症の男が女性の尾行を依頼され、次第に不審な事実へと辿り着く。前半はメロドラマ、後半は謎解きミステリーとして展開する構成もさることながら、ジェームズ・スチュアート扮する主人公が、次第にヒロインに対して病的ともいえる執着を示してゆく点が興味深い。"めまい"に対する視覚的な効果が随所に盛り込まれ、その効果を伴って金髪美女とブルネットの美女を魅惑的に演じたキム・ノヴァクの魅力も引き出されている。
床が落ちるような「めまいショット」(一般にはドリーズームと呼ばれる)は有名で、この作品以後、数え切れないほどの映画やCM、テレビドラマで引用されるようになった。ズームレンズを用い、ズームアウトしながらカメラを前方へ動かすことで、被写体のサイズが変わらずに広角になる。鐘楼のシーンでは、ミニチュアを作成して横倒しに置き、レールに置いたズームレンズ付きカメラを移動させて撮影している。スティーヴン・スピルバーグ監督は『E.T.』の街を見下ろす崖のシーンで完璧なシンクロを実現させている。
2012年、英国映画協会が発表した『世界の批評家が選ぶ偉大な映画50選』の第1位に選ばれた。
ジャンル:ミステリー
個人的満足度:☆★★★★