映画 #48『キューブ2』

 

『キューブ2』(2002年・カナダ)

*****

原題:Cube 2: Hypercube

監督:アンジェイ・セクラ

出演:ケリー・マチェット
   ジェラント・ウィン・デイビス
   グレース・リン・カン
   マシュー・ファーガソン
   ニール・クローン
   バーバラ・ゴードン
   リンゼイ・コーネル
   ブルース・グレイ

上映時間:1時間35分

f:id:power-zero:20210926022314j:image

 

【あらすじ】

心理療法医のケイトが目覚めると、そこは冷たく光る立方体(CUBE)の中だった。CUBEを囲む6面の壁にはそれぞれドアがあり、別の部屋へと続いていた。他の部屋へ入ったケイトは、経営コンサルタントのサイモン、盲目の学生サーシャ、さらには技術者のジェリーらと出会う。みな、ここに来た経緯も理由も知らなかった。出口を求めて移動を始めた彼らは、やがてゲームデザイナーのマックス、国防総省エンジニアのマグワイア大佐、老女ペイリー夫人たちと合流。大佐は、ここから脱出するためにはこのCUBEの謎を解く以外にないと語るのだが…。

 

*****

 

ミニシアターとしては異例の大ヒット映画を記録した「CUBE」の続篇。さらに複雑に進化した四次元立方体<CUBE>が、8人の男女を閉じ込める。タランティーノ作品などで撮影を手掛けてきたアンドレイ・セクラが、ヴィンチェンゾ・ナタリに続いてメガホンをとった。

 

 

【起】
立方体の箱のような中で目覚めた、一人の中年男性。片脚を怪我した彼はハッチに触れながら「数字はどこだ!?」と血眼になっているシーンから始まる。中年男性はハッチに書かれているのであろう数字とやらを見つけられず、おまけにアタッシュケースの中身も無くなったと知り絶望する。「あいつら……あいつら畜生!」とここへ自分を閉じ込めた相手への呪詛を吐きうなだれる中年。

場面は変わり別の部屋。そこには心理カウンセラーのケイトがいた。見知らぬ場所、見知らぬ天井、見知らぬ内装――ハッチを潜り隣の部屋へと向かうと、倒れているスーツ姿の男性を見つける。大丈夫かと声を掛けた矢先、男が立ち上がりケイトに馬乗りになり襲い掛かる。男の名はサイモン。ナイフを突きつけ声を出すなと脅しかけるサイモン、ケイトに敵意がないか確かめているのだ。質問攻めから解放され立ち上がるケイト。彼もまたこの謎の場所に連れてこられた人物であった。ケイトが部屋を移動していくと、途中「お願い来ないで」と弱弱しい声が聞こえてくる。ハッチを抜けた先では、部屋の片隅で座り込むサングラスをかけた女性がいた。怖がらないで、と警戒する彼女に近づき「サーシャ」という名を聞き出すケイト。サーシャは目が見えないらしく、しかし「頭はまともよ」と答え怯えた様子のままだ。そこへ更に姿を見せたのはジェリーと言う名の気さくそうな小太りの中年男性。ここまで一人でいて、やっと誰かと出会えたと喜ぶ様子を見せる。ここがどこかは当然分からないというジェリーだったが、ハッチに目印代わりに数字を書き始める。部屋は空間や時間、引力がおかしくなっているらしく部屋そのものが移動しているような気さえするという。ジェリーによれば、もう何時間か周辺を探索しているのだがようやく4つめの部屋を見つけたばかりなのだという。その時、突如部屋の天井から奇妙な異音が鳴り響く。怯えるサーシャを連れ別の部屋へと移動すると、隣の部屋では首を吊っている男性とそれを何とかして支えている男性の2人組がいた。首を吊っているのはよく見ると、初めのアタッシュケースの男性のようである。先程のサイモンも合流し、一同一丸となって彼を助ける。アタッシュケースの男性は国防省の軍人で、名をマグワイアという。彼の身体は拷問にでもあったのか傷だらけだ。彼を初めに助けようと支えていた茶髪の青年の名はマックス。友人が2年前、ペンタゴンのコンピューターにハッキングし服役中らしい。その関係で、マックスはマグワイアペンタゴン関係者であることを見抜いた。自分はそれを手伝ったからここにいるのかもしれないというマックスに、ケイトは「じゃあ私達は囚人?」と反論を寄越し、そうじゃないと否定するマックス。首吊りから救出されたマグワイアには拷問の痕跡があり、手の平には煙草のような跡も残されていた。「次は私たちの番よ……」と悲観的になるサーシャに大丈夫だと果敢に慰めるケイト。ふと、またあの異音がし怯えるサーシャだったがその時ハッチが開き、中から姿を見せたのは白髪頭の中年女性だった。彼女の名はペイリー。認知症を患っているらしくここをどこかスポーツジムと勘違いしているようだ。自己紹介を始める一同だが、誰一人としてここにいる理由を知る者はいない。と、ここでジェリーが部屋についての結論を語り始める。部屋が移動しているとしか思えないが何か規則性がある筈だ、と述べた矢先に何か閃光のようなものが直走り一同は驚愕する。目の見えないサーシャは聴覚に優れているのか察知が早く、「私には背筋が凍りつくような音がする」と恐れ戦く。拷問され満身創痍の彼を無理にでも連れて行こうとするサイモン、しかし地響きが起き倒れ込む一同。「あれが来た!」とただ一人恐怖で声を上げるサーシャに、サイモンはマグワイアに「何なんだ! 教えろ大佐、どうしたらここから出られる」と詰め寄る。「分からん……でも暗号が解ければ……」「暗号ってのは何なんだよ!」「数字が書いてあったんだ……」数字、数字、と不明瞭な言葉を繰り返すマグワイアは拷問のせいもあってか意識も混濁としており受け答えも心許ない。そうこうしているうちに部屋に異変が起き始め、壁が波打ったかと思うと透明の人型シルエットが一瞬浮かび上がる。異様な事態にすぐにその場から離れ始める一同。やがて、波打った壁がゆらゆらと彼らを飲み込もうと迫ってくる。逃げまどい次のエリアへ移ろうとするがマグワイアだけは手錠をしており動こうとしない。ケイトが鍵を貰おうとするが彼はそれを飲み込んでしまい、「本当にここから出られると思うのか?」と絶望に駆られたような言葉を吐く。見殺しにはできないと最後まで彼を助けようとするものの、結局間に合わずマグワイアは壁に呑まれ死亡する。


 【承】
迫ってくる壁から逃れ走る一同、ジェリーは部屋に数字を書いて進むのを忘れなかった。サイモンが「関係者はマグワイアだけだったのに……」と嘆くサイモンにジェリーが「実は自分はここのドアのタッチセンサーを作成したんです」と発言する。「どうしてもっと早く言ってくれないの」と迫るケイトに「契約上、法律の関係でそれはできなかった。それに自分たちは実験的何かとしか聞かされていない」としどろもどろになってしまう。法もへったくれもあるかと迫るサイモンはこの建物の目的について問い詰める。ジェリー自身、知りかねているのか「……飽くまでも噂ですが……」「どんな噂だ!」。怒鳴るサイモンに根負けし、「量子のテレポーテーションです。けど噂さ」と答えるが、マックスはSFの世界だ、と信じ難いようにしている。馬鹿げている、とケイトも話半分に聞き流すがジェリー本人でさえそう感じているのだからもっともな話であった。その時、認知症の老女・ペイリーが「あらぁ。驚いた。テセラクトじゃない。ねえ、綺麗でしょう」と何やら床に近づき始める。ジェリーがそれに何か過剰に反応し、「これはこの角度から見ると……テセラクト!つまり四次元の立方体です!」と叫ぶがサイモンらには何のことかよく理解できない。が。ジェリーはこれがヒントになったようで何か閃いたようだ。説明を求めると彼は語り始める、「テセラクトとは別名ハイパーキューブ。四次元の立方体です。同じ部屋が何度も現れたり壁が迫って来たり部屋が消えたろ。空間移動だ、それで全部説明がつく但し超立方体は理論上のもので、実在はしない」。この意見に対し、マックスは「僕らはみんなテレビか何かの撮影でゲームに参加させられてるんじゃないのか?と持論を述べる。ともかく脱出のために地図を作ろうという話になるが、天井を見上げると「60659」という数字が書かれている。ジェリーが書いたのかと聞かれるが、まさか羽は生えてませんよ……と苦笑交じりに答える。では一体誰が?どういう意味なのだろうと考え、まさか6万以上も部屋があるということだろうかと悩む――ふとマックスが次への扉を開けると「これで視聴率が倍に跳ね上がるな」と冗談めかした発言をかました。どういう意味かとのぞき込むと、部屋の中には赤いドレスを着た妖艶な女が倒れている。女性のもとへ向かおうとするマックスだがその部屋自体の重力の向きが変わっており、落ちそうになってしまう。何とか重力の罠を潜り、マックスは女性へと近づいていく。次々部屋の中へと降りていく一同、赤いドレスの女性の名はジュリアという。「私、誘拐でもされたの?」――そうだ、一同ここへ集められるまでの記憶がないのだ。一同はそれぞれ覚えている範囲での記憶を話す。ジェリーはネブラスカ州在住で、既婚男性。ベッドで寝るところだった。ケイトは勤め先の病院から車で帰る途中で、長時間勤務で疲れて急いで帰りたかったらしい。サイモンはニューヘブン在住の経営コンサルタントで(が、これは虚偽の情報である)、呑みに行った後の記憶がないそうだ。マックスはパロ・アルトでゲームソフトを作っていて、キーボードの前で居眠りをしたところまでを覚えている。サーシャはニューメキシコに住んでいて、曰く「いつも通り台所で宿題をしていた。記憶はそこまで」。ペイリーが覚えていたのは、犬を散歩に連れて行ったことまで。ジュリアはサンタモニカで試写会後のパーティーに参加していた。女優としてではなく、弁護士として。もし自分が誘拐されたのなら身代金目的だろうと笑う。――共通点は全くなし。謎が進まないまま、何故かジュリーの着けている腕時計と全く同じ時計が発見され、やはり黒幕はお前じゃないのかと疑うサイモン。その矢先、ペイリーが勝手に行動し隣の部屋のハッチを開け「あの人まだ生きてるんじゃないの!?」と新たな生存者を発見したようだ。重力の向きが変わりまたもや苦戦するが、隣の部屋には確かに新たな男がいた。しかし、男の身体は腐りかけておりとっくに死んでいた。彼の身体には詩文で書いたと思われる無数の数式が刻まれており、それを見たペイリーは「あらまあ。ローゼンズワーグ博士じゃない!これでもうノーベル賞は無理ね」と落胆する。ローゼンズワーグ博士は理論物理学の第一人者で、その分野は「量子のカオス」について。彼の身体にもそうだが、数式は壁にも書かれていた。例の60659についての数字も記載されており彼が書いたものだと判明する。意味はあるのだろうがその分からず、ペンで自身の腕に記しておくケイト。その最中、ペイリーが突然「私ったらどうかしてるわ、何て馬鹿なの!アイゾン、どこにいったの!今すぐ戻ってらっしゃい!」と徘徊し始める。ケイトが誰を探しているのかと聞くとアイゾンと言うのは愛犬とのこと。アイゾンという名に違和感を覚える一同、アイゾンというのは兵器メーカーの会社名らしいのだ。アイゾンを探しうろつくペイリーに何気なく前職を尋ねてみると、理論数学の研究員だったことが判明する。勤務先を聞くと、「スキッピー・リサーチ機関よ。ントン州にある研究組織」。不思議に思ったケイトは、「会社の名がアイゾン・リサーチで、犬の名がスキッピーなのでは?」と推測し、それが見事的中する。退職前は兵器メーカーで働いていた、ということなのだ。死んだ博士とも友人関係にあったということである。


 【転】
ペイリーに仕事内容について深く問いただすと、認知症の彼女は当時の記憶が混濁するのか突如「アレックス・トラクスの考え方は非人道的です!」と興奮し語り始める。その名を聞き絶望的な表情を浮かべる一同。アレックス・トラクスというのは正体不明の天才ハッカーで、生死も不明でありもし彼が作った迷宮なのだとすれば脱出は確実に不可能だという。しかし、アレックスは架空の人物だとする声もある。話の最中にもペイリーは興奮し、「世の中理論上にとどめておくべきものだってあるわ!」と叫びだす。サイモンが「心理学者なら彼女の心境を説明してくれ」とケイトに諭すと、ケイトは「昔の友人の死体を見て過去の記憶が刺激されたんだと思う」。ペイリーがここの制作と関わっている可能性が見えてきたということだろうか。ペイリーが愛犬の名を呼びながら上機嫌に扉を開くと、その先には何故かもう1人のペイリーの姿が。しかも彼女は助けを求めている。すかさず、サイモンの姿が現れ「この女の言うことを信じるな!」と叫んだ直後首が吹き飛び強制的に扉がします。当然一同は混乱する。何故ペイリーとサイモンが2人いたのか?パニックに陥る一同にジェリーが必死に説明しようとする、これは理屈には適っていると。ここが多次元の量子空間ならば、いくつもの平行した現実が存在する!」。本で読んだのだというパラレルワールドのような理屈を必死に説明するが、サイモンは全てジェリーの罠じゃないのかと主張を始める。サイモンの推理は「俺達はみんな麻薬を注射されて病院に入院してるんだよ」ということだ。そしてもう一度あの扉を開けたらナイフで刺すと言ってすっかり疑心暗鬼に陥っている一同を脅す。認知症で事態をあまり把握できていないペイリーが「そうだわ!みんなでアイスを食べれば仲良くなれるわよ」と場違いな言葉を漏らすが、サイモンはナイフを向けたまま「アンタ本当に面白いボケ女だな」と罵る。中傷はやめなさいと止めるケイトに、サイモンは「こいつは兵器メーカーで働いていた女で、博士とも知り合いだった。もう1人の俺の言った『信じるな』ってのは正しいんじゃないのか?」と笑い飛ばす。すると、サーシャが静かな声で「信用できないのはあなたの方よ」と零すが、無理やり皆に先へ進むよう言い放つ。

移動中、ハッカーのアレックスについて尋ねるケイト。マックスは「コンピュータ・ウィルスで東京の株式市場を混乱させたり、アメリカの軍事予算に抗議してハッキングをし、空軍機を落としたとも言われてる。遺伝子工学で初めて作られた人間で、一般人にまぎれて生活しているという噂もある」と冗談のような伝説を語る。他にも平行世界についての話が上がるが、ここにいる限り常識が通用しないという結論でまとめられてしまう。

一同が仮眠中、サイモンはジェリーに「2人だけの秘密にしてほしい」ととある事情を打ち明ける。実はサイモンは私立探偵で、1人の女性を探していた。女性の名はベッキー、何とアイゾン社に勤めていたのだ――と、ここで盲目の女性サーシャがまた何かを感じケイトを起こす。ケイトが起き上がると、宙に四角い透明な何かが現れたのだった。徐々に形を変えていき、四角い立方体へと変化していく物体。もしかしたら出口なんじゃないのかと騒ぐ者もいるが、サーシャは「どうしようもなく恐ろしいわ」と何かを感じ取っている。ペイリーは「数学的にみると完璧よ、四角形が規則正しくて!」と好奇心旺盛に触れようとするがジェリーが慌ててそれを止めようとする。するとその四角形の表面は鋭い棘を帯びた物体へと変貌し攻撃してくる。ペイリーを庇い逃げ遅れたジェリーは、その物体に飲み込まれ四肢をバラバラにされて死亡してしまう。取り残されたサーシャのために、ケイトはサイモンの静止も聞かずに危険な中へと戻っていく。その立法物体は巨大化していき棘を帯びた渦状のようになり辺りを巻き込んでいくが、偶然サーシャのサングラスが吸収されたことがヒントになり「動くものに反応していた」ことが分かる。ケイトは彼女にじっとしていることを言い、そうしているうちに立法物体は自然消滅していった。ジェリーの死を悲しみながらも、先へ進むことにする2人。


 【結】
「このハイパーキューブ(超立方体)に入った人間は皆苦痛に満ちた死を遂げるんだ。だから――」、サイモンはナイフを抜き出しその刃先をペイリーに向けていた。「いかれたふりはもうやめて脱出の方法を教えるんだ、さあ!」――ペイリーを縛り付け脅しかけるサイモン。仲間たちが止めるのも聞かず、サイモンはペイリーが認知症のふりをしているものと思い尋問を続ける。その矢先、壁から鋭利な石柱が壁から次々現れ始めた。サイモンはペイリーの拘束を解こうとするがペイリーがしがみついてきたためにやむをえずナイフで刺してしまう。そのまま石柱に呑まれるペイリー。と、逃げるマックスとジュリアの残像を見たサイモンは、混乱しているうちに孤立してしまう。一方、逃げたジュリアとマックスは「こんな巧妙なものを作れるのはやっぱりアレックスくらいだ」と言う。ジュリアは「でももしここを作ったのがそのアレックスだとしてもこの状況が変わると思う?」話しながら振り返ると、何故かマックスの動きが非常にスローになっていた。一方で、ジュリアの動きは二倍速にでもしたかのように加速しているのだ。マックスは驚きながら「こりゃすごい。部屋によって時間の速さが変わる、可変タイムスピード空間だ」と話す。しかし、マックスは何故かやたらとアレックスに固執し、ここで殺されるのではないかとばかり話す。ジュリアに「何をそんなに怯えているの。あなたは別にアレックスと関係ないじゃない」と言われるも、彼には後ろめたいことがあるようだ。内緒の話だと念を押し、マックスは語りだす――「去年レラティビティーという可変スピードのゲームを作ったんだけど、そのアイデアが盗まれたんだよ!ゲームは発売されなかったし裁判中なんだ」。それを聞いた弁護士のジュリアが話を詳しく尋ねる。「盗んだ会社はサイバー社だ」と言うと、ジュリアはあっさり「和解した方があなたのためよ。相手が悪すぎる、サイバー社は子会社で強大な親会社がいる――アイゾンよ」。それを聞いて硬直するマックス。「どうしてそれを知っている……?」「私がアイゾンの弁護士だからよ」。

一方でサイモンは、扉から見覚えのある男を引っ張り出す。そう、死んだはずのジュリーだった。ジュリーはサイモンをまったく覚えておらず、これが恐らく「平行世界」でのジュリーなのだろう。いくつもの現実が並行してクロスオーバーしている――以前は信じられなかった彼の話が現実となってしまったのだ……サイモンはまるで何か吹っ切れたかのように不気味に笑う。「こうなったらもう何でもいい。なあ、ジュリー。腹は減っているか?」「……え、ええ、少しだけ……」「そうか。俺はめちゃくちゃ空いている」――暗転する映像。再び映し出されたサイモンの身体には少し返り血がついており、満足そうな顔を浮かべている。すると再び、平行世界からジュリーが何も知らないで現れる。何も知らないジュリーは「やっと誰かに会えた!」と嬉しそうに声を出すが、全てを知っているサイモンは一見人当たりのよさそうな近づき方をし、「お前のことなら何でも知っているよジュリー」と再び彼を襲うのだった。

無事に立方体の攻撃から生き残ったケイトとサーシャは色んな部屋に向かいながら出口を探す。「60659」の数字の意味も解明できず、しかしケイトが見つけたのは「平行世界」すなわちパラレルワールドでハッピーエンドにならずに餓死してしまった自分たちの遺体だった。やがてサーシャが「もう私のことは置いて行って。足手まといにしかなれないから」と悲観に暮れる。そんなことはない、と励ますケイトにもサーシャは聞く耳を持たず「絶望しかないのよ!」と嘆く。ケイトは「そんなことはない。脱出方法を見つけてみせる」と言い切るが、サーシャはそれを低く笑い「よくそんなことが言えるわね。私より先に見つけるなんて無理よ」と言う。ケイトが「それどういう意味?あなたが私よりここについてよく知ってると言うこと?」と尋ねると、サーシャは語り始めた。「……ジュリーは間違い。マックスは正解」――サーシャというのはアレックスの愛称だった。そう、伝説のハッカーとされたアレックス・トラスクは実在したのだ……「はじめまして、アレックス・トラスク。会えて光栄よ」。

その頃、すっかり殺人鬼と化していたサイモンは再び扉から「犠牲者」を引きずり出す。それは――彼が探していた女、ベッキーに違いなかった。「俺はサイモン。君の両親に雇われた、君を探せって」。嬉しそうに「本当なの?」と微笑むベッキー。嬉しさのあまりサイモンに抱き着くベッキー。「俺も見つけられて嬉しいよ――何時間もこの中で探していた……」呟きながらサイモンはベッキーを刺殺した。倒れた彼女を見下ろしながら「ああ、ここは最高の場所だ。人殺しをするには最適の平行世界だ」と完全に狂人の顔をして囁くサイモン。

サーシャ曰く、作ったのではなくヒントを与えただけとのことである。出る方法について尋ねかけると、「ゲームじゃないからハッピーエンドはないの」とにべもなくサーシャ――もといアレックスは答えるのであった。「もうあたしにはどうすることもできない。制御不能よ」……焦れたようにケイトは叫ぶ、「この数字には意味はないの!?60659って」「……悪いけど、もうおしまいだわ」「いいえまだ終わってない!望みはある!」と元の部屋へと引き返す2人。最初の部屋には助けた筈のマグワイアの首吊り死体があり、更にはジェリーが書いた図や数字がみんな復活していく。アレックスがどこか遠い目をさせて言った。「すべての現実がこの部屋で重なり始めたの……」時間がくれば1つの部屋に全てのものが集まるのではないかと考えたアレックス。60659という数字は、その集まる時間、6時06分59秒――と答える。ケイトが慌てて問いかける。「私たちはどうなるの?現実が全て集まってしまったら」「あらゆるものが崩壊する。あとは時間の問題」……ケイトは「あたしはそんなの嫌!」と出口を探す。「あなたみたいに強くなりたかった。あなた、立派よ」と微笑むアレックスだったが出口を開けた時、殺人に目覚め、刃物を構えたサイモンが笑顔で姿を見せた。「やあケイト!来いよ、楽しいぞ!」狂った笑顔を見せるサイモンにペンを刺して逆襲するケイト。扉を閉めるとすぐ背後で悲鳴がし、振り返ると何と年老いたサイモンがアレックスを人質にして微笑んでいた。時間の流れが特殊なこの場所では普通には進まないのだ。ペンで目を攻撃されたサイモンは、ケイトと引き換えに彼女を返してやると交渉してくる。まずは彼女を放して、というケイトにこいつの身代わりになるんだなと不敵に微笑むサイモン。目的は何かと尋ねるケイトに「空腹なんだ」と答えるサイモン。アレックスは無気力そうな瞳のまま、「サイモン……どうせ無駄よ……最後はみんな死ぬんだから」と呟いた彼女の首の骨を折り殺す。ケイトはナイフを突きつけられながらも、サイモンとの格闘の末素手で彼を倒す。均衡が崩れ、破壊されていくキューブ。そして、6時6分59秒になった瞬間に、下の床の扉を開き中へと飛び込む。気が付けば、水の溢れる床に倒れていたケイト。無事に何者か達の手により保護され、そのままどこか部屋の奥へと連れていかれる。将軍と呼ばれる男が「やあケイト。無事脱出法を見つけたんだな。それで例のチップは?」「はい将軍。ぎりぎりのところで」――そう、ケイトはアイゾンの組織側の人間だったのだ。そして、ハッカーのアレックス・トラスクが持つチップ(メモリーカード)の回収を密かに命令されていたのである。ケイトは命令通り、将軍にメモリーカード付きのネックレスを渡す。「何かが記録されていないか調べてもらおう」と将軍は部下にそれを預けた。しかし、その直後にあっさりと銃殺されるケイト。全ては機密保持のためなのか?用済みになった彼女の亡骸を処理する兵士と、突如かかってきた謎の電話に出る将軍。「閣下。ご安心ください、第二段階は終了しました。はい、直ちに」。電話を切ると、再び動き出す将軍と兵士達。電話の詳細の真相は語られることはなく、謎を残したままで物語は終了するのだった。

 

 

ジャンル:スリラー

個人的満足度:☆☆☆★★