映画 #922『遠い夜明け』

 

『遠い夜明け』(1987年・イギリス)

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原題:Cry Freedom

監督:リチャード・アッテンボロー

出演:ケヴィン・クライン
   デンゼル・ワシントン
   ペネロープ・ウィルトン
   ケヴィン・マクナリー
   ジョセット・サイモン
   ジュアニタウォーターマン
   ゼイクス・モカ
   ジョン・ソウ
   ジュリアン・グローヴァー
   イアン・リチャードソン
   アレック・マッコーエン
   ティモシー・ウェスト

上映時間:2時間38分

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【あらすじ】

1975年、アパルトヘイト(人種隔離政策)による黒人への弾圧が厳しさを増す南アフリカ共和国。新聞編集長のウッズは、革新的な黒人運動家ビコに批判的な立場をとっていた。しかし、ある時ウッズはビコ本人と出会ったことから、彼の穏やかな人柄と深い思想に共鳴。ビコの支持者が増えるにつれ、当局の弾圧も一層厳しさを増していった。そんなある日、ビコが設立したコミュニティ・センターが覆面の男たちに襲撃されてしまう……。

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アパルトヘイト政策をとる南アフリカ共和国を舞台に、自由な理想社会を叫ぶ黒人男性と彼を支持する白人男性との熱い友情を描く壮大な叙事詩的映画。製作・監督は『ガンジー』『コーラスライン』のリチャード・アッテンボロー、原作は本編の主人公でもあるドナルド・ウッズ、脚本はジョン・ブライリー、撮影はロニー・テイラー、音楽はジョージ・フェントンとジョナス・グワングワが担当。出演はケヴィン・クラインデンゼル・ワシントン、ペネロープ・ウィルトンほか。

 

原作の「遠い夜明け」(Cry Freedom)は、アパルトヘイト政権下の南アフリカ共和国で殺害された最も著名な黒人解放活動家スティーヴ・ビコ南アフリカ共和国の有力紙デイリー・ディスパッチ紙の白人記者ドナルド・ウッズとの交友をベースに書かれている。ウッズは警察の監視下で密かにスティーヴ・ビコの死について調査し、それはウッズが南アフリカ共和国からイギリスに亡命後、出版された。

 

一貫してヒューマニズムを追求し続けるイギリスの巨匠リチャード・アッテンボロー監督が、製作当時も続いていた南アフリカ共和国の人種隔離政策問題「アパルトヘイト」に、さまざまな迫害をものともせず真っ向から取り組んだ大力作。とてつもない社会性を背景にした前半の友情劇と後半の脱出劇のバランスが素晴らしく、単なるメッセージ映画ではなく見事にドラマティックな映画として成立しているところに、巨匠の意気込みを感じる。エンド・クレジットでアパルトヘイトのために死亡した人々の名が連なっていくあたりも、人が人にもたらす差別という名の恐怖を痛感させる。

 

 

ジャンル:ドラマ

個人的満足度:★★★★★