映画 #593『イル・ポスティーノ』

 

『イル・ポスティーノ』(1994年・イタリア、フランス)

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原題:Il Postino

英題:The Postman

監督:マイケル・ラドフォード

出演:マッシモ・トロイージ
   フィリップ・ノワレ
   マリア・グラツィア・クチノッタ
   リンダ・モレッティ
   アンナ・ボナイウート
   マリアーノ・リギッロ
   レナート・スカルパ  ほか

上映時間:1時間48分

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【あらすじ】

ナポリの沖合いに浮かぶ小さな島。そこへチリからイタリアに亡命してきた詩人パブロ・ネルーダが滞在する事になった。老いた父と暮らし、漁師になるのを望んでいない青年マリオは、世界中から送られてくるパブロへの郵便を届けるためだけの配達人の職につく。配達を続けるうちに、年の差も越えて次第に友情を育んでいく二人。詩の素晴らしさを知ったマリオは、詩の"隠喩"についても教わる。やがてマリオは食堂で働くベアトリーチェという娘に一目惚れし、彼女に詩を送ろうとするのだが……。

 

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実在した詩人パブロ・ネルーダに材を取ったA・スカルメタの原作を基に、イタリアの喜劇俳優M・トロイージが病に蝕まれた体で映画化にこぎつけた執念の作品。1950年代のイタリアを舞台に、ひとりの素朴な青年の成長をあたたかい眼差しで描き出している。

 

祖国チリを追われたパブロ・ネルーダが、ナポリ湾のカプリ島に身を寄せた史実にもとづき、架空の漁村を舞台に物語は展開する。

異邦人との触れ合いによって、自分の故郷をもう一度見つめ直す主人公の姿が静かな感動を呼ぶ。逮捕命令が撤回されてパブロはやがて母国へと帰っていくが、それ以降の展開こそが重要な物語だ。パブロに届けようとマリオが島の様々な音を集めていくシーンなど一番の見せ場と言ってもいいだろう(もちろん美しい撮影と情緒豊かな音楽も忘れてはならない)。

友を、女を、故郷を愛する事の素晴らしさが淡々とした演出の根底に確かに息づいている。P・ノワレの笑顔と、それに負けないくらいのM・トロイージの表情。惜しくも彼はこの作品のクランクアップからわずか12時間後に他界してしまったが、ここにその足跡はしかと刻まれた。

 

映画内で居酒屋兼食堂として登場した場所は、カプリ島と同じくナポリ湾に浮かぶプローチダ島である。現在は、レストラン兼カフェとして営業し、また店内には映画に関連するものが展示してある。

 

 

ジャンル:ドラマ

個人的満足度:☆☆☆☆☆